「やがて恋するヴィヴィレイン 1」感想

戦場で想いを寄せ合った男女は、戦争が終わったとき、平和によって切り裂かれる。二人の再会は新たな戦乱をもってしか果たされないのか。「やがて恋するヴィヴィレイン」は「とある飛空士の追憶」を書いた犬村小六氏が描く戦争ロマンスファンタジー小説である。

 


三千メートルの断崖絶壁で隔たれた3つの異なる文化圏、エデン、グレイスランド、ジュデッカが存在する世界で、物語はグレイスランドの国々を中心に展開する。

 

謎の少女シルフィが最期に言い残した願いを叶えるため、「ヴィヴィ・レイン」という人物を探すルカ=バルカ。ガルメンディア王国軍で兵士をしていた彼は、王女ファニア=ガルメンディア直属の近衛連隊として、隣国のテラノーラ慈善同盟への遠征に参加する。
順調に侵攻していたガルメンディア軍は、しかし、テラノーラ軍が投入したエデンの機械兵"ミカエル"の暴走により、壊滅的打撃を受ける。
敵に捕らえられたファニアを救い出したルカは、ファニア達と共にガルメンディア軍を勝利に導くべく大胆な作戦を決行する。

 


敵の追跡を掻い潜る中で、ルカとファニアがお互いへの信頼を深めていく描写がある一方で、その関係が二人立場の違い故に悲劇を孕んでいることも伺える甘く切ない恋物語

戦争終結後に、ルカがファニアの作る王国とヴィヴィレインの新たな手掛かりに希望を抱きながら仲間と共に旅立つ一方、ファニアはいずれルカと対立する未来を悲嘆し一人涙を流す。この二人の描写の対比が、ファニアの悲しみを印象的にし、胸が締め付けられるような思いがした。

ファニアとルカとの関係は果たしてどうなるのか。ルカはヴィヴィレインを見つけ出し、シルフィとの約束を果たすことができるのか。他にも様々な謎を残したまま、次巻以降に続く今後の展開が気になって仕方がない。

 

「やがて恋するヴィヴィ・レイン 1」著:犬村小六 株式会社小学館 2016年9月21日 1刷