「戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗」感想

満州事変から真珠湾攻撃まで、大日本帝国はどのような制約条件のなか世界の国々と交渉をしてきたのか。本書では当時の状況を「リットン報告書」、「三国同盟」、「日米交渉」の3つの交渉から史料をもとに読み解く。

 

天皇のもとに横並びの内閣と陸海軍、軍部のクーデターや国家主義団体の暗殺事件が当たり前のように相次ぐ情勢、外交交渉とかみ合わない軍部の行動や意向。不安定な情勢で臣民は正気を失い、国連から脱退した大日本帝国は、ナチスと同盟を結び、真珠湾攻撃で太平洋戦争の幕を切る。

 

しかし、その表出した過激な結果行動の裏では、信じられないほど粘り強くそれらを阻止しようと動いている日本人もいたことに率直に驚いた。

 

江戸幕府から明治政府へと変わることで、国民は政治を自分事として考えるようになった。さらに太平洋戦争後は平和主義の国家として再出発し、経済大国へとなった。そしてこれから先、間違いなくなんらかの重大な変化の局面を迎えるときがあるだろう。その時日本が選択する道が、より良いものにするよう、歴史を学ぶモチベーションとなる本だった。

 

「戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗」著:加藤陽子 朝日出版社 2016年10月20日 初版第5刷