映画 「Swallow」 感想

大企業の御曹司との結婚生活、"幸せじゃない"なんて口が裂けても言えない境遇。
幸せなはずの生活の中で、ハンターが抱くコンプレックスは徐々に彼女の心を蝕んでいく。

 

劣等感で心が押しつぶされそうな時、ハンターはふと手にしたビー玉を嚥下した。
とんでもないことをした。でも、そのことがハンターの心を軽くした。
気付けばハンターは異食にのめりこんでいた。

 

ハンターの異食症が夫と義両親に知られた途端、靄に包まれていたような違和感が次第に顕在化していく。
自らを束縛するしがらみに苦悩しながらも、ハンターはしがらみと決別することを選択する。

 

[Swallow 公式サイトURL]
http://klockworx-v.com/swallow/#smooth-scroll-top

 


自分に自信が持てないハンターが、夫と義両親の愛に違和感を感じながらも、それをよすがに何度も夫に愛を確認する姿は痛ましかった。
そして、異食症の発症をきっかけに自らを束縛するしがらみと正面から向き合っていくハンターの姿は、見ているこちらも胸が張り裂ける思いがした。

 

本作では何度も"幸せ"という言葉が、台詞や挿入歌で繰り返し登場する。
そして、"しがらみにまみれた物質的・社会的豊かさ"より"自分の人生は自分で決める、決められること"の方が幸せだというメッセージを強く感じた。

 

一方で、上記の様に幸せの種類を選択できるのは安定・成熟した社会に生活する人々の特権なのではないだろうかと疑う気持ちもある。本作でも紛争地出身で看護師のルアイという人物が登場し、以下のような言葉をハンターに投げかけるのだ。
「紛争地には心の病などない。皆が銃弾を避けるのに必死だから」
圧倒的な理不尽を前では、幸せの形を選ぶこともできないのだ。

 

しかし、Haley Bennett演じるハンターが苦しみ、悲しみ、そして時には怯えながらも自らの人生を切り開いていく、生々しいまでの姿に感動を覚えたことを否定することはできない。

 

「Swallow」監督:Carlo Mirabella-Davis 2021年1月1日日本公開