「チェ・ゲバラの遥かな旅」感想

 強者が弱者を搾取する。そんな残酷な原理に憤る感情を、青臭いと一蹴するのは簡単なことだ。しかし、そんな残酷な原理に命を賭けて立ち向かい続けた男がいる。
 エルネスト・ゲバラ(通称チェ・ゲバラ)は、フィデル・カストロ等と共にキューバ革命を達成したアルゼンチン人だ。

 

 チェ・ゲバラが生きた時代、南米はアメリカの裏庭と言われており、アメリカによる支配は徹底的なものだった。大学卒業後にグアテマラに訪れたゲバラは、グアテマラ革命政権がアメリカの策略によって崩壊させられるのを目の当たりにする。

 

 ラテンアメリカの開放と統一に対する思いを深める中、ゲバラフィデル・カストロ等と出会い、約4年の歳月の後にキューバ革命を達成する。しかし、ゲバラは自らの志を全うするため、キューバでの地位を捨て、最期の革命の地であるボリビアで処刑されるまで革命に身を捧る。

 

 今でもカリスマ的人気を確立しているチェ・ゲバラ。年を重ねて、理不尽な現実にも折り合いをつける人が多い中、彼の真っすぐに生き方が、人を惹きつけ続けているのではないかと思う。


チェ・ゲバラの遥かな旅」著:戸井十月 集英社文庫 2008年4月27日 第8版